移住者インタビュー

移住してきた人と地域の人の間に立って 「無理しないで」と言ってまわる。 Uターンしてきた僕だからできることです。

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10年ぶりに生まれ故郷にUターンした猪野さん。地元を盛り上げるためNPO法人に参加したり、郷土料理のそば作りを継承したりと奮闘中!

猪野 大助(いの だいすけ)さん

  • 出身地:高知県大豊町
  • 現住所:大豊町
  • 移住年:2012年

大豊町出身。18歳で町を出て、大阪へ。2002年大阪市役所に入庁し、10年勤務。主に街づくりや都市計画に携わる。子どもが生まれたとき「大阪で子育てするイメージがわかなくて」、2012年にUターン。現在は、トマトをハウス栽培する傍ら、地元名物立川そばの後継者としても活躍。

故郷を元気にしたい。

帰ってきた当初はどうしても、比べてしまうところがありました。
大阪は新しいものを取り入れて、どんどん発展して変わっていく都市だった。

なのに故郷の大豊町は、10年経って帰ってきても何も新しくならず、どんどん廃れていっているように思えた。残していかないといけないものまで消えていきそうで。自分でできることが何かあるんじゃないかと思いました。

地元が盛り上がるならなんでもやってやろうと、NPO法人「元気おおとよ」に参加しました。ちょうど僕が帰郷した2012年に創立された団体で、観光イベントを企画したり、婚活パーティを開いたり、今は移住のサポートをメインでやっています。


地域の仲間たちと。自分と同じ子育て世代が揃うとにぎやかです。

子どもの頃、見えなかったものが今は見えるようになった。

Uターンのきっかけは、結婚して子どもが生まれたこと。僕自身、山や川で遊んで育ったから、自分の子どもは田舎で育てたいという思いがありました。Uターンして10年経って、今ではうちの子もすっかり地元の子として成長して、僕自身も地域の資源を再興させる仕事に携わるようになりました。

でも帰郷した当初は自分のことで手一杯で、地域の事情に目が向き始めたのは少し時間が経ってからでした。

18歳で町を出た頃は、親や近所の大人たちが地域の役割を担っているなんて知らなかった。消防団や区の仕事、祭りの当番みたいないろいろな役割をこなして、地域を回していたんだなと、今になって感じます。ずっと役割を担ってきた大人たちがいま、年をとって、集落を維持することがままならなくなってきています。

今は当時よりもっと住人の数が減って、一人で何役もこなすこともある。地区の仕事は若い世代に集中しがちで、事情を知らずに移住してきた人にとっては、やっぱり重荷になりますよね。


家族とのカット。僕自身が育った町で、子どもが同じように育っていくのを見ると、やっぱり嬉しい。

新しく住み始めた人と、ずっと地域に住んでいる人 その架け橋になれたら。

一方で、限界集落に住むおじいちゃんおばあちゃんからしてみれば、若い人が移住してきたらつい期待してしまう。その気持ちも、すっごくわかるんです。

でも期待が高すぎると近づきすぎて、都会から移住してきた人と上手に距離をとれなくなる。庭を草刈りしていない、寄り合いに参加してくれない、消防団の仕事を断られた…期待や親切心がないまぜになって、言葉にしてしまうことでギクシャクすることもある。

僕はUターンという立場だから、そこのところお互いに正直に言いやすくて、有利ですよね。僕は僕の立場を利用して、両者の間に立つようにしています。地元の人の期待や不安もわかるし、都会から大豊町に移住してきた人の戸惑いもわかる。この町で生まれ育って、一度都会に出て、Uターンしてきた僕だからできる役割だと思っています。

僕は移住してきた人に「あんまり無理しないで」と、言うようにしています。地域に溶け込みたいという気持ちを持ってくれるのはありがたいけど、そればかりじゃ疲れるし倒れてしまう。やりたいことがあって移住してきたはずなのに、地域のことで手いっぱいになるのは本末転倒です。地域の人と渡り合いながらも、自分の人生を優先する「図々しさ」が必要な局面もあるはず。

僕がそのサポートをして、地元にずっといる人も、最近越して来た人も、どちらも暮らしやすい環境になったら理想的。

2008年、立川体験交流会イベント。たくさんのお客さんに加え、町民も参加して賑やかに開催されました。ただ、住人の数はこの10数年で減少し、イベントをやるにもマンパワー不足が心配されています。

懐かしい家族の味「立川そば」を残したくて。

町に残る史跡のひとつに、旧立川(たじかわ)番所書院があります。土佐藩主が参勤交代時に宿泊した屋敷跡です。その旧番所のすぐそばに「御殿茶屋」という小さな茶屋があって、30年以上前から地元名物の「立川そば」を出していました。

「立川そば」は、地元の人にとって懐かしい家族の味です。特に大晦日の夜は、食卓に家族皆がそろって食べました。つなぎを使わない極太の麺で、強いそばの風味ともっちりした麺の噛み応えが自慢。山菜やイノシシ肉をのせていただきます。そばの香りとだし汁のうまみが口の中に広がって、食べると体がポカポカします。

「御殿茶屋」の製麺業を引き継ぐことにしたのは、郷土の味をなくしたくないから。跡継ぎがいないからといってこんな郷土料理がなくなるのはもったいないですよね。月に一度、茶屋を開いて、できたてのそばを提供しています。

手作りした生麺をサービスエリアや道の駅、高知市内の店にも卸すようにもなりました。おかげさまで好評で、町外の方が立川そばをおいしいと言ってくれる機会が増えました。

旧立川番所書院は週に一度、日曜のみの開館。茶屋は第3日曜のみ営業。どちらももっと開けたいけど、そうもいかない。せめて茶屋は月に2回開けられるようにしたいと思っています。立川そばにしても、旧番所にしても、地域資源を活かしきれてないように見えて、そこがもったいない。僕の力でそこをもっとお手伝いできたらと思っています。

愛媛県との県境近くにある、旧立川番所書院。国の重要文化財。週に1回、日曜のみ見学者にむけて開館している。御殿茶屋はここから徒歩1分。


年越しそばとして愛されてきた「立川そば」。つなぎなし、太くて短いもちもち麺。

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